忘年会シーズン。心が沈む。みんなで笑って飲んで、騒いで、今年を締めくくるあの空気が好きだった。だけど今年は違う。飲むこと、食べることの制限だけではない。怖くなる。忘れられてしまうことが。
昔から飲み会の宴会芸が好きだった。特に替え歌。旋律はそのままなのに、言葉を変えるだけで曲の雰囲気ががらりと変わる。その魔法みたいな感覚が好きで、よく作っては披露していた。もちろん、受けなかったことも、すべったことも、叱られたことも山ほどある。それでも、誰かの笑顔がひとつでも生まれたら、それで十分だった。
高校の学園祭を思い出す。僕は演じたい気持ちを飲み込んで、大道具を選んだ。先生に許可をもらい、自前の丸鋸や電動ドリルを学校に持ち込み、夜遅くまで作業してドアや窓を作った。舞台の裏側で汗だくになりながら、誰かが輝く瞬間を支えることに夢中だった。金賞を取ったとき、胸の奥で静かに気づいた。
自分は主役じゃなくていい。誰かを輝かせる役割にも、確かな価値がある。
その感覚は、大人になっても変わらなかった。元職場の送別会でも、サプライズで替え歌を作った。職場への想いをぎゅっと詰め込んだ歌。あの夜の空気、みんなの表情、今でも覚えている。ただ一つだけ、時間があれば歌いたかった一節があった。でも、それを歌えば場が暗くなる気がして、飲み込んだ。あの会は前向きに終わらせたかったから。
歌ったのは Mrs. GREEN APPLE の「青と夏」。歌いたかった一節。最後のサビ前の“寂しさや忘れられる不安、それでも人を信じたいという想い”が込められたあのフレーズ。特に、
運命が突き動かされてゆく
赤い糸が音を立てる
『主役は貴方』だ
『主役は貴方だ』という言葉は、あの人を見て伝えたかった。元職場との繋がり、大切なあの人との繋がり。そのどちらも、僕にとっては今も大事なまま。
だけど、今年の忘年会で、きっと僕は忘れられてしまうんだろう。自分は、そういう存在だ。そう思うと、胸が焼けるように痛む。寂しいし、怖い。本当に。
大切なあの人が歩いていく人生の舞台。そっと背景を整え、光が当たる場所をつくるように、引き立て役でいられたら、僕はそれで十分だ。あの人の人生が輝く瞬間に、少しでも関われるなら、それだけで嬉しい。
つながりを求める気持ちを手放したくない。信じたい。その想いだけは、今年の終わりが近づくいま、どうしても記しておきたくなった。


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