はなまる以上の、大きな丸を

趣味

窓の外を眺めると、柔らかい春の光が差し込んでいる。穏やかな気候だ。
世の中の時間は止まることなく流れているのに、僕の時間だけが、カチカチと不器用な音を立てて止まっているような、そんな感覚になることがある。

適応障害と診断されて、仕事を休み始めてから、僕にとっての日常は随分と姿を変えた。
かつては当たり前だった外に出ることや何かを作ることが、エベレストに登るくらいの高い壁に見える日もある。

そんな僕の心をそっと支えてくれるのが、BTSの音楽であり、彼らが歩んできた、あまりにも泥臭くて美しい軌跡だ。
彼らの物語をなぞってみると、最初から順風満帆だったわけではないことが痛いほど伝わってくる。

2013年、小さな事務所から防弾少年団としてデビューした彼らを待っていたのは、冷ややかな視線と心ない評価だった。
1日15時間の猛練習に耐え、彼らは必死に自分たちの居場所を探していた。

胸を打たれたのは、2015年の花様年華シリーズの頃のエピソード。
ようやく音楽番組で1位を獲り、光が見えたと思った瞬間に、あらぬ疑惑で中傷され、精神的に追い詰められていった彼ら。
2018年には、世界的な成功の裏側で、実は解散を考えるほど苦しんでいたという告白もあったらしい。

そんな数々の荒波を乗り越え、ついに彼らは2026年、完全体としての復活を果たした。
僕はその復活ライブを、アーカイブだが、Netflixの配信で見守った。
画面越しに伝わってくる7人の絆、そしてARMYの熱量。
ライブが終盤に差し掛かり、Dynamiteのイントロが流れたとき、気づけば涙が止まらなくなっていた。

彼らだって、あんなに輝いている彼らだって、死ぬほど苦しかったんだ。
だから今、この場所に立っているんだ。
その事実が、今の僕には何よりの救いになる。

彼らが絶望を乗り越えて、再び一つの星座となった姿を見ると、僕も、僕のペースでいいから、もう少しだけ歩いてみようと思えるのだ。

今日の僕の話をしよう。
朝の7時。冷蔵庫にあるりんごを見て、アップルパイを作ろうと思った。
普通の人からすれば、なんてことのない日常のひとコマかもしれない。
しかし、そこからが動けなかった。

結局、材料を買いにスーパーへ向かうことができたのは、14時。
気づけば7時間、僕はただぼーっとしていた。
体が重くて、心が追いつかなくて、ただ時間が過ぎていくのを眺めているしかできなかった。

何をやっているんだろう。
たかだかスーパーに行くだけなのに。
そんな自己嫌悪が頭をもたげそうになったが、僕はイヤホンを耳に差し込んだ。

流れてくる彼らの歌声。
いつか彼らが世界に届けた、人生は続いていくというメッセージ。彼らの音楽を聴きながら、大切なあの人から光が届いた。その光が背中を押してくれた。
動けない僕の背中を、本当に優しく押してくれた。

14時、ようやくスーパーへ向かう。
外の空気は心地よく、買い物をして帰ってくるだけで精一杯だったが、キッチンに立って、りんごを煮て、パイを焼き上げた。

焼き上がったアップルパイの甘い香りが部屋に広がったとき、僕は自分にこう言ってあげたいと思った。
よくやった。はなまる以上の、大きな丸をあげよう。

BTSの曲にYet To Comeという曲がある。
最高の瞬間はまだこれからだという誓いの歌だ。

今の僕は、まだ暗いトンネルの中にいるのかもしれない。
しかし、彼らが数年間の空白を経て、再び7人で再集結して伝説を繋いだように、僕の人生の花様年華も、きっとこれからやってくると信じたい。

朝の7時間の停滞も、スーパーに行けた勇気も、アップルパイを作った達成感も。
すべて、僕が明日を生きていくための大切な軌跡だ。

もし今、僕と同じように動けなくて苦しんでいる人がいたら。
今日、スーパーに行けたなら。あるいは、行けなくても行こうと思えたなら。
それだけで、あなたはもう十分に頑張っている。

僕と一緒に、自分に最高のはなまるをあげよう。
僕たちの最高の瞬間は、これからゆっくりとやってくるはずだから。

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