暖かな日差しを浴びながら、本を読みたくなった。
窓から差し込む光があまりに心地よくて、自然と体が外を向いた。けれど、外へ出ると風はまだ若干冷たくて、鼻につんと来るような冬の名残を運んでくる。
相棒の愛車ブーンに乗り込み、いつもの図書館へと向かう。
僕にとって図書館は、単に本を借りる場所ではない。
乱れがちな心の波を凪の状態に戻し、自分の現在地を確認するための聖域のような場所だ。
図書館でのルーティンは決まっている。
まず最初に向かうのは、天文学のブースだ。
僕は星が好きだ。
月を眺めることが好きだ。
いや、正確には好きになった、というほうが正しい。
ここは僕にとって大事な大事なことを確認する場所でもある。
天文学の棚を見るのは、それがあの人との共通の楽しみのひとつだから。
夜空を見上げた時のあの静けさや、月の満ち欠けに心を寄せる時間を共有できている。
その事実が、僕の支えになっている。
棚を指でなぞりながら、新作がないかチェックする。
今日は、まだ読んだことのない本を2冊見つけた。
そのうちの1冊を手に取り、まずは午前中、この静かな知識の海に身を浸すことに決めた。
次に向かうのは、社会福祉のコーナーだ。
なぜここに来るのか。
それは、僕が僕自身の心を知ってあげたいと願っているから。
自分の内側で起きている変化や、言葉にならない違和感を、先人たちの知恵を借りて紐解いていく。
自分を置き去りにしないために、1冊の本を慎重に選んだ。
その後は技術工学、情報科学、歴史、経済、語学、そして料理。
今日じっくり読む3冊と、自宅へ連れて帰る6冊を机に置いた。
その本の重みは、そのまま僕の好奇心の重みであり、生きていくための糧でもある。
ふと振り返ると、今日言葉を交わしたのは、コンビニの店員さんと司書さん、そしてまた別のコンビニの店員さんだけだった。
必要最低限の、けれど確かな社会との繋がり。
そんな静かな一日。
お昼時、大切なあの人から言葉が舞い降りてきた。
その感覚は、喉の渇きを潤す朝露を飲むかのようだった。
明日のBTSのライブ配信について、楽しみなことを教えてくれた。
その一言だけで、僕のモノクロだった世界に色彩が戻る。
よかったら一緒に楽しみたい。
心からそう思う。
言葉を受け取った後、僕は2時間ほど、ただぼーっと空を眺めていた。
青空はどこまでも高く、白い雲がゆっくりと流れていく。
そのあまりの穏やかさが、かえって僕の心の中にある空白を際立たせるようだった。
あの人は今、どんな休日を過ごしているのだろうか。
この暖かな陽気を楽しめているだろうか。
それとも、あの人もまた、僕と同じように鼻につんと来るような冷たい風を感じているのだろうか。
穏やかな時間を過ごせていればいいのだけれど。
自分の中に居座る寂しさという感情に、僕は嘘をつくことができなかった。
パイプ椅子の上で肩を縮め、三角座りをしながら、僕はその割り切れない想いを見つめていた。
少し小腹が空いたので、コンビニでお団子を買った。
ふと、そろそろお花見の季節だなと、穏やかな春の気配を肌で感じた。
かつてお寺で眺めた、あの幻想的な夜桜が懐かしくなる。
散り急ぐ花びらが街灯に照らされ、夢のような景色だった。
手元にあった京都の庭園の本を捲ると、先日拝観したばかりの一休寺が掲載されていた。
あの凛とした空気。
鳥たちのさえずり。
目を閉じると、あの場所で感じた平穏が蘇る。
大きく息を吸い込んだ。
……吸うことは、できた。
今日は筋トレを休むことにした。
心地よい筋肉痛が残る体に、今日は無理をさせたくない。
がむしゃらに体を動かして紛らわせるのではなく、今はじっと、この重い体と心を休ませる時なのだと思う。
体も心も、もっと大きく、もっと強くしていくために。
今はただ、自分を労わってあげよう。
寂しさを抱えたままの僕も、前を向こうとしている僕も、どちらも大切な自分の一部なのだから。
明日のライブ配信、あの人と心がつながる時間を大切に想いながら、今日は静かに眠りにつこうと思う。



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