初雪と青い音色

仕事

あの人から、やわらかな光をもらえた。
その光は、手のひらに落ちる月明かりのようで、
“あたたかく過ごせていそうだ”という穏やかな気配をまとっていた。
あの人も、あの人のペースで整えている。
だからこそ、焦らず・止まらず・ぼちぼちと。
その言葉を、今日の自分にもそっと返しておきたい。

今日は、どうしても早く帰りたい理由があった。
取り寄せていた楽器が入荷したと連絡があったからだ。
Ashton の青いヴァイオリン。
オーストラリアのブランドで、初心者向けの手頃な楽器だけれど、
“好きな色で、好きな音を出す”という最初の一歩には十分すぎる。
メンテナンスもしてもらえるようで、その安心感も背中を押してくれた。

気軽に始められること。
気軽に音が出せること。
その軽やかさが、今の自分にはちょうどいい。

部屋では弾けないので、練習は相棒である車の中で。
青いヴァイオリンと、ピンクの相棒。
その色の並びを想像するだけで、
まだ知らない未来の音が、胸の奥で小さく鳴り始める。
いつか、交響曲第7番第4楽章を奏でられる日を思い描きながら。

軽い音色でも、きっと心のエンジンキーを回すように、
静かで確かな始動音になるはずだ。
心のハンドルも、そっと優しく握れる。
前へ進む準備が、またひとつ整う。

塗装会社との打ち合わせを終えて会社に戻ると、急な配送の依頼。
こんなことは日常茶飯事だ。
早く帰りたい気持ちもあって、少し急ぎ足で向かった。
そのとき、荷物を積む拍子に手を少し傷つけてしまった。
いつもなら樹脂の軍手をはめるのに、今日は素手のままだった。

幸い、深いところまでは傷つかずに済んだ。
傷口を見つめていると、一粒の雪がふわりと落ちてきた。
それは、自分にとって今年初めて見る雪だった。
熱を帯びた部分をやわらかく冷ましてくれるようで、
今年の初雪は冷たいのに、どこかあたたかかった。

この仕事は、一つの油断が大きな危険につながる。
現場のヘルメットに名前や必要な情報を記すのは、
万が一のときに備えるためだ。
今日の小さな出来事が、
「自分の行動ひとつが誰かの安心につながる」
という当たり前を、そっと思い出させてくれた。

今は現場に出る人の分しかヘルメットがない。
近々は、社員全員が安全に働けるように、購入を提案して、全員分を揃えたいと思っている。
工場のマップも作成したので、
特に危険が潜んでいそうな場所には、
ひと目で分かるように印をつけていくつもりだ。

誰かのためになることなら、できる範囲で積み重ねていきたい。
今日の初雪のように、
そっと誰かの熱を和らげてあげられるような、
静かで優しい光になれたらいい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました