可能性は無限大。
そう自分に言い聞かせる。
未来はまだ空白で、どんな色にも染められる。
だから大丈夫。
何度も、何度も、胸の中で繰り返した。
今日は晴れたり曇ったり。
気分も同じように揺れ動いていたけれど、
その中でひとつだけ、はっきりと光が差した出来事があった。
週末のライブのチケットが、無事に届いたことだ。
金曜日、坂井さんの歌声が聴ける。
それだけで、少し先の時間がやわらかく明るくなる。
あの人はどうだろう。
チケット、取れていたらいい。
そんな静かな願いが胸の奥でそっと灯る。
午後はカーショップへ。
相棒のために防寒用のハンドルカバーを探したけれど、
どうしてもピンとくる色が見つからなかった。
今日は芳香剤だけ購入することにした。
焦らなくていい。
ぼちぼちでいい。
そのほうが、きっと相棒も嬉しい。
本当はピーチの香りにしようと思っていたけれど、
実際に嗅いでみると少し強すぎた。
代わりに見つけたのが「ラボン デ ブーン」という商品。
車種と同じ“ブーン”という名前に、小さく驚いた。
その中の「シャイニームーン」という香りに惹かれた。
月の輝き。
名前にときめき、香りもすっきりしていたので、自然と手が伸びた。

駐車場に戻ると、ボンネットに鳥のフンが落ちていた。
運がいい。
昔から、鳥のフンがつくと運がつくと信じている。
小学生の頃のことを思い出した。
忘れ物ばかりして、朝の登校時に母親に呼び止められていたあの頃。
ある朝、肩をたたかれた気がして振り返ると、
そこにいたのは母親ではなく――
堂々と肩に乗った鳥のフンだった。
着替え直して遅れて登校することになったけれど、
その「ずれ」が思わぬ出会いをくれた。
いつもは散歩の時間にしか姿を見せない近所のセントバーナードが、
その日に限って外に出ていたのだ。
あの、何も考えていなさそうな優しい顔。
大きな体に似合わないほど穏やかな目。
撫でるだけで、嫌な気持ちがすっと消えていった。
プーさんのぬいぐるみの次に、あの時代の僕を癒してくれた存在だった。

そんなことを思い出しながら、
拭き取りシートで相棒のボンネットをそっと拭いた。
相棒が喜んでいる気がした。
カービィの声が聞こえたような気もする。
そういえば、カービィのエアライダーは結局プレイしていない。
カービィ好きのあの人は、もう遊んだのだろうか。
思い出すと少し気持ちが沈むけれど、
こんなんじゃダメだ、と自分に言い聞かせる。
前を向く。
下を向かない。
朝、あの人からもらった光を何度も見返して、
自分の推進力に変えていく。
晩ごはんは素うどん。
トッピングも何もないけれど、
何かを口に入れられた自分に、今日は丸をあげたい。
明日は久しぶりに3Dプリンターを動かそう。
図面を描くことも、仕事に戻るためのリハビリになる。
自分の歩幅で、少しずつ。
今日は、3時間以上眠れますように。
静かな読書の時間を過ごして、眠りにつこう。
シャイニームーンの香りみたいに、未来もすっきりと澄んでいけばいい。


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