工場の大掃除は、想像以上のボリュームだ。
前職では自分のデスク周りを整えるだけでよかったけれど、私はいつも神棚の掃除だけは欠かさなかった。一年の感謝を神様に伝える、その静かな時間が、自分の中の軸になっていたからだ。
宗教的な話は苦手な人もいるかもしれないけれど、私は昔から、神様は本当にいると思っている。だからガンを宣告されたときも、神様に問いかけた。「どうしてなんですか」と。手術を終えてからは、以前よりもずっと、いろいろな人や物に感謝するようになった。
一年間、壊れずに動いてくれた製造設備やトラック。毎日、人を支えてくれた床や階段。暑さ寒さから守ってくれたエアコン。そして、毎朝顔を合わせるトイレにも。掃除をしながら一つひとつに「ありがとう」と伝えていると、自分がどれだけ多くのものに支えられて生きているか、改めて気づかされる。
そしてこの一年、会社のために働いてくださった社員の方々。それぞれの努力が積み重なって、今の会社がある。人への感謝は、どれだけ言葉にしても足りない。
そして何より、あなたへの感謝は、どれだけ言葉を尽くしても追いつかない。
正直、掃除は得意ではない。部屋も気づけば散らかってしまうし、心が揺れているときほど、物の置き場も曖昧になる。部屋の乱れは心の乱れだと言うけれど、あれは本当だと思う。だからこそ、工場の大掃除に向き合う時間は、今の自分の心を整える時間にもなっている。
そんな中で、ふとあなたの所作を思い出す。
整理整頓が丁寧で、ゴミの分別もきれいだった。食べ終わったバーガーの包み紙を、そっと折りたたんでいた姿が記憶に残っている。あれはただの癖ではなく、あなたなりの「ありがとう」だったのかもしれない。ものを大切に扱うその姿勢は、言葉よりも静かに心に響く。
その所作を思い出すたびに、自分ももう少し丁寧に生きたいと思える。掃除が苦手でも、感謝の気持ちで向き合えば、少しずつでも整っていく。あなたの生き方が、自分の中の何かをそっと正してくれている気がする。
今、朝の4時。工場に出ている。
ネガティブな気持ちでいるわけではない。揺れる感情も含めて受け入れながら、また前に進むために。今日の自分ができることを積み重ねていけば、きっと未来へつながっていく。
大掃除の続きをしながら、そんなことを考えているいま。
感謝と揺れと、少しの決意。その全部を抱えたまま、静かに朝焼けを迎える準備をしている。
掃除のように、心も少しずつ整えていけばいい。
ネガティブな気持ちも、無理に捨てなくていい。
あなたが教えてくれた丁寧さを、今日の自分にも重ねながら。


コメント