午前中の空には、うっすらと雲が広がっていた。
しかし、肌に触れる空気は驚くほどに温かく、もう半袖で過ごしてもいいくらいだ。
僕はクローゼットの奥から段ボールを引き出した。
中には、出番を待っていた夏服たちが眠っている。
一枚ずつ取り出しながら、はっきりと自分の中で衣替えのスイッチが入るのを感じた。
そんな時、大切なあの人からスタンプが届いた。
たんぽぽの綿毛をふーっと飛ばしている、可愛らしい絵柄だった。
どこかで、本物の綿毛を飛ばしていたのだろうか。
ふと、そんな想像が膨らむ。
当初は桜を見に行こうと考えていたのだが、スタンプに影響された僕は、急にたんぽぽを探しに行きたくなった。
午後は、僕の相棒である車のタイヤ交換へ向かった。
ショップに預けると、作業完了まで2時間かかるとのことだ。
手持ち無沙汰になった僕は、近くにある公園まで歩いてみることにした。
時刻は14時。
それなりの広さがある公園なのに、遊んでいる人は一人もいない。
だんだんと日差しが強まり、ひっそりとした空間に僕の足音だけが響く。
お目当てのたんぽぽは、あちこちに黄色い花を咲かせていた。
けれど、スタンプのような綿毛は見当たらない。
あの人は、どこで綿毛を見つけて飛ばしていたのだろう。
飛んでいく綿毛を静かに眺める、あの人の横顔を想像してみる。
ふわふわと風に舞う白い粒を、ボーッと眺めるあの人の姿。
そして、そんな姿をさらに後ろからボーッと眺める僕の視線。
そんな穏やかな時間が、どこかに存在していたらいいと思う。
ふと視線を落とすと、足元にはシロツメクサが自生していた。
四つ葉を探してみたが、そう簡単には見つからない。

代わりに僕の目に入ってきたのは、一匹のナナホシテントウだった。
指先ほどの小さな体。
けれど、生い茂る葉を力強くかき分けて歩くその姿を見ていたら、不思議と少しだけ勇気をもらったような気がした。
作業終了を知らせるカーショップからの電話が鳴った。
知らない番号にはいつも少し身構えてしまうが、今日は落ち着いて出ることができた。
迎えに行った相棒は、タイヤを新調してどこか誇らしげに見える。
夏服を出し、相棒の足元も整った。
自然と、夏の装いへのわくわく感が込み上げてくる。
この夏は、この相棒と一緒にどこへ行こうか。
どんな景色を、この目に焼き付けようか。
真っ青な空と、どこまでも続く海。
太陽に照らされた白い砂浜を、風を切って走りたい。
いつかそんな日が来ればいいと想像しながら、僕は家路に就いた。
夜は自分を整える時間だ。
Netflixでドラマ『九条の大罪』を視聴した。
なかなか見応えのある重厚なストーリーに、思考が深く入り込む。
その後は、BTSのライブ映像で『Dynamite』を流しながら、身体を鍛えるワークアウトに励んだ。
彼らのエネルギーに触発されて、心地よい汗を流す。
今日という一日を振り返ってみると、季節の変化を感じ、小さな虫に勇気をもらい、身体を動かすことができた。
今日もひとつ、成長できたと思う。
劇的な変化じゃなくていい。
何かひとつ、自分の中で積み上げられたら、それで十分だ。
明日もまた、自分のペースで、ぼちぼちと歩いていこうと思う。





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