昨日は、得意先だけでなく、
普段あまり足を運ばない会社にも挨拶に回った。
初めて訪れる工場の空気は、
少しだけ緊張もあったけれど、
扉を開けた瞬間に漂う金属の匂いや、
作業音のリズムは、どこか懐かしくもあった。
棚の並び方ひとつ、工具の置き方ひとつにも、
その会社の歴史や人の気配がにじんでいて、
短い時間だったけれど、
「ものづくりの世界は広いな」と静かに思った。
自分の会社だけを見ていると気づかないことが、
外に出ると自然と見えてくる。
そんな年始の挨拶回りの途中で、
LED光を支えるフレームを納めている植物工場にも立ち寄った。
扉を開けた瞬間、
外の工場とはまったく違う空気が流れてきた。
金属の匂いではなく、
ほんのり湿った、やわらかな緑の匂い。
整然と並んだケースの中で、
筐体の天板から落ちる光が、
葉の一枚一枚をそっと照らしていた。
人工の光なのに、まるで冬の朝の光のようで、
葉の表面が静かに輝いていた。
光を受けた葉は、
まるで嬉しそうに呼吸しているように見えた。
その姿があまりにも穏やかで、優しくて、
しばらくのあいだ、ただ立ち尽くしてしまった。
気づけば、この緑をあの人がもしゃもしゃと食べている姿を
自然と想像していた。
その想像だけで、胸の奥の緊張がふっとほどけた。
今年に入って、三度目の“ほどける瞬間”だった。
光にもいろいろある。
植物を育てる光、
冬を彩る光、
そして誰かを包む優しい光。
植物工場の光は、先代が繋いだ星座だ。
取引先の方々と、長い時間をかけて温めてきた夢。
これからも、その星座の瞬きを支えるために、
金属加工の現場でできることを学び続けていく。
光に包まれる葉を見ていると、
未来はもっと静かで、もっと優しい形でも
広がっていくのだと感じる。
急がなくていい。
止まらなくていい。
ぼちぼち進めば、未来につながっていく。
そんなことを思いながら、
昨日の記録をここにそっと置いておく。
あの人が、
この文章を読んだとき、
少しでも心が落ち着きますように。


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