ポストの中に、前職の職場からのハガキが届いていた。内容はOB会の招待状。4月20日までに返送が必要らしい。先日かかってきた心当たりのない電話は、きっとこの件だったのだろう。

あんなに怯える必要はなかったのかもしれない。それなのに、いまだに電話の音が怖い。前職の関係者だろうと、知らない番号だろうと、着信画面を見るだけで胸が締め付けられる。自分を否定されるような、得体の知れない不安に襲われてしまう。
OB会に参加するかどうか、今の僕にはまだ答えが出せない。5月になれば心が治っているのかもわからないし、そもそも今の僕があの場所に顔を見せられる人間なのかも自信がない。かつての職場に、僕の居場所なんて、もうどこにも残っていないのではないか。部屋に一人でいると、どうしてもそんな思考の渦に飲み込まれてしまう。
今日は「さくらの日」。朝、大切なあの人に、「桜を見に行きたい」と宣言した。沈みそうな自分を食い止め、僕は宣言通りに動くことを決めた。少しの勇気を振り絞って、外に出る。

駐車場で待っていた相棒のダイハツ・ブーンを見ると、また鳥に糞を落とされていた。苦笑いしながら丁寧に拭き取り、エンジンをかける。その小さな振動が、僕の背中を少しだけ押してくれる気がした。

車を走らせ、地元の「さくらであい館」へ向かった。桜はまだ満開ではなかったけれど、今日の太陽はいつもより少しだけ優しく感じられた。あの人から託されたミッション、「日向ぼっこ」。桜並木をゆっくりと歩きながら、僕は自分の現在地を考える。


休職して、来週でちょうど2ヶ月が経つ。ハガキの中央に居座る、大きな近況報告の欄。
休職中の身で「順調です」なんて書けるはずもない。かといって、心の内をすべて吐き出す勇気もまだなくて、いくら言葉を探しても空回りしてしまう。真っ白なままの欄は、今の僕そのもののようだった。
結局、答えは出なかった。けれど、こうして外の空気を吸い、太陽の光を浴びた事実は、きっと無駄じゃない。今は無理に答えを出そうとせず、今の自分を連れて帰ろう。
そんな、ある午前中の記録。



コメント