『銀河鉄道の夜』

読書

わたしのなつかしい一冊。思い出すのは『銀河鉄道の夜』。小学校5年生の夏休みの宿題で感想文を書いたあの日から、今日久しぶりにこの物語を読み返した。

当時、自分の部屋にクーラーはなく、うだるような熱帯夜だった。宿題は休みの終わりにまとめて取りかかる方で、読書感想文と図工の宿題を残していた。図工は自作のプラネタリウムを作ろうと決め、粘土で地球に見立てた球体をこしらえ、そこに小さな穴を開けて電球を入れた。青色に塗った球体を扇風機の風で乾かしながら、完成を待つ。わくわくしながらこの本を読んでいた。その夜の記憶は今も鮮やかに蘇る。ちなみにプラネタリウムは校内で賞をいただいた。

子どもの頃は、ジョバンニとカムパネルラの旅を不思議で少し切ない物語として受け止めていた。星空の美しさや友達と旅する楽しさが心に残り、孤独や痛みの深さにはまだ気づいていなかった。

しかし今、大人になった私が読み返すと、その響き方はまったく異なる。ジョバンニの孤独、そして真実を知りたいのに知れないというもどかしさ。それらは今の私自身の現状と重なり合う。今日も睡眠はわずか三時間。もはやそれが日常となりつつある。体の疲れは薬やサプリで何とか補えるが、目を閉じても心は休まらず、ただ真実を知りたいという思いばかりが募る。届くのは断片的な情報だけで、真実は霧のように掴めない。胸を締めつけるもどかしさは孤独を深め、眠りを奪い続ける。

思考は止まらず、真実を求める声が頭の中で反響し続ける。気にするななんて無理だ。忘れられるわけがない。大切な人だった。一緒になりたいと誓った人だ。だからこそ、知れない現実が私を苦しめる。誰が私の過去を知っているのか。なぜ失ったと思っていた人から連絡がきたのか。他にも大切な仲間がたくさんいた。誰が知っているのか…。

仕事で過去の地へ行かねばならない時もある。その方面に車を走らせる時、星空を眺めるジョバンニのようにはなれない。ジョバンニは孤独を抱えながら星空に慰めを見出した。だが私には、過去の影が星空を覆い隠してしまう。

『銀河鉄道の夜』は、子どもの頃には気づけなかった孤独や真実への渇望を、大人になった今の私に改めて教えてくれた。感想文を書いたあの日の私と、眠れない夜に読み返す今の私。その二つの視点を重ねることで、私はただ、真実を求め続ける心を記録していきたいと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました