空中で拾う命の熱

勉強

午前中は抜けるような晴天だった。
午後からは天気が崩れるという予報が出ていたけれど、どうしても外に出たかった。何かをしたかった。その衝動に突き動かされるように、足はまた大阪、梅田へと向かっていた。

目的地は、梅田スカイビル。
今日は地上から見上げるのではなく、高い場所から海を眺めたかった。最上階から遠く広がる大阪湾を見下ろす。

視線の先、霞む景色の中に働く街の気配を探す。
残念ながらクレーンの姿までは捉えられなかったが、あの場所では今も、誰かが休まずコンテナを運び、街を動かし続けているのだろう。

働きたい。
ふいにそんな思いが胸をかすめる。働けない辛さ、そして会いたい人に会えない寂しさが、静かに、けれど確かに胸を締め付けた。

けれど、自分に言い聞かせる。ひとつできたら、はなまるだと。
今日、あの人へ送った言葉。それに対してあの人がくれた肯定の光。
ゆっくりでいい、焦らず、ぼちぼちでいい。

下を向きそうになった心をもう一度上へ向けるために、僕は絹谷幸二天空美術館へと足を向けた。

昨年、悪性リンパ腫のため82歳で逝去された日本を代表する洋画家、絹谷幸二氏。
今回はその追悼展だった。

絹谷氏の代名詞とも言えるのが、壁画の古典技法であるアフレスコだ。
生乾きの漆喰に色を乗せていくため、一度描けば修正は一切効かない。そんな一発勝負の筆致から生まれる絵には、圧倒的な活力がみなぎっていた。それはまさに、今この瞬間も呼吸をしているような、生きている絵だった。

展示の目玉である3D映像を観るために、受付でメガネを受け取る。
USJの4D以来だなと小さく呟いた。

映像は「平治の乱」「夢夢想」というタイトルの二部構成。
わずか10分足らずの時間だったが、見終わったあとは、まるで一本の長編映画を鑑賞したあとのような重厚な余韻に包まれていた。

映像の余韻を抱いたまま、展示された原画を鑑賞する。
たった今描き上げられたばかりのような瑞々しさと、力強い脈動。風神雷神の足元にパラボラアンテナや風力発電が設置されていたり、七福神が宝船ではなくジェットスキーを操っていたり。古典的なテーマを現代的な構図で再解釈するその独創性には、遊び心と鋭い感性が同居していた。

赤、青、金。
鮮やかな色彩が爆発するようなそのキャンバスは、まさに命そのものの象徴だった。作品と正対していると、こちらの体温まで上がっていくような不思議な熱を感じた。

美術に触れることで、またひとつ感性が磨かれた。
またひとつ、成長できた気がする。

ひとつできたら、はなまる。
今日、この場所まで足を運べたことが、僕にとっての大きなはなまるだ。

窓の外は予報通り、少しずつ天気が怪しくなってきた。
あの人が雨に濡れていませんように。どうか穏やかに過ごせていますように。

そう静かに祈りながら、今日はこれで筆を置こうと思う。

Screenshot

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