雨が降り出す前に

時計の針の音が、耳に刺さる。
ただの小さな音が、こんなにも大きく響く。

睡眠薬を飲んだのに、一晩中眠れなかった。
Apple Watchが記録した睡眠データは、何も語らない空っぽのまま。

思考が止まらない。
仕事のこと、大切なあの人のこと、少し長い週末のこと。

身体の鍛え方はわかる。
負荷をかければ、筋肉は応えてくれる。
だけど、心の鍛え方がわからない。
いくら外側を大きくしても、根っこが細ければ、簡単に倒れてしまう。

オペラ座の怪人のファントムのようになりたい。
あんなふうに強く、揺るぎない存在に。
だけど今は、布団から出ることさえままならない。

シャワーを浴びる元気もなかった。
浴びなきゃいけないとわかっていても、身体が動かない。

深い呼吸がしたい。
肺の奥まで、新鮮な空気を届けたい。

ふと、外を見る。
空はまだ晴れているけれど、うっすらと雲が増えてきた。
午後からは雨が降るらしい。

世界が暗くなる前に、何か食べないと。
台所にバナナがあった気がする。
それだけでも、お腹に入れたい。

なぜ、こんなに苦しくても前を向こうとするのか。理由は、はっきりしている。

僕にとっての支えは、あの人だから。

あの人に、胸を張れる自分になりたいから。
その一心で、どうにか体を起こす。

暗い空が広がる前に、少しだけ栄養を摂って、自分を整えようと思う。
今は、それだけで精一杯。
だけど、それでいい。

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