光が届かないのは、
年始の慌ただしさの中で、
あの人が自分の気持ちを丁寧に扱おうとしているからだと思っている。
あの人が慎重な人だということは、僕はよく知っている。
だから、無理に言葉を求めるつもりはない。
焦らなくていいし、急がなくていい。
あの人が安心できるタイミングで、
また光を返してくれたら、それで十分だ。
光のない静けさが部屋に溶け込んで、
胸の奥が少しだけ冷える瞬間もある。
でも、それは僕が勝手に想像してしまっただけの揺れだ。
現実のあの人は、いつだって真面目で、
大切なことほど慎重に向き合う人だから。
だから、待てる。
あの人のペースを守りながら、
僕は僕で、やるべきことを進めていく。
今日は工場に行く予定だったけれど、
ふと「今は違う」と感じて、部屋の片付けを選んだ。
新しい場所へ向かうために、
今の自分に必要なものを静かに選び直す時間。
空のダンボールをひとつ床に置き、
そこへ部屋のぬいぐるみをひとつずつ入れていく。
イーブイの星空コスチュームのぬいぐるみ。
あの人からもらった日のことを思い出す。
イーブイは大好きだ。可能性は無限大だから。
もらった時、イーブイを見た瞬間、
つぶらな瞳がこちらを見上げているようで、
「かわいい…」と小さく声が漏れるほど、
純粋な“うれしさ”が広がったのを覚えている。
ふわふわの毛並みも、丸くて柔らかそうなしっぽも、
袋越しでもその可愛さが伝わってくる。
しかも一番くじの景品だ。
あの人が自分のために引いて、選んで、
「これを渡したい」と思ってくれたことが、
そのまま温度になって伝わってきた。
「こんなに可愛いものを、自分のために」
その事実だけで、胸がじんわり熱くなった。本当に嬉しかった。あの日の自分は、本当に嬉しくて、
しばらくイーブイから目を離せなかった。
星空のリボン、きらりと光る小さな星の飾り。
それは、あの人との“共通点”でもあった。
星が好きで、夜空を見上げる時間が好きで、
同じ光を見て、同じ気持ちを共有できたあの日々。
本当は袋を開けて、頭を撫でてあげたい。
柔らかい毛並みに触れて、
「かわいいね」と声をかけてあげたい。
でも、袋を開けないままでいる。
開けてしまうと、
この“もらった日のままの気持ち”が少し変わってしまいそうで。
だから、ずっと開けていない。
袋越しにそっと眺めるだけで、今でも十分だと思えている。
たぶん次の場所でも、この子は袋のまま連れていくのだろう。
触れられない距離のまま、触れたい気持ちを抑えながら、
それでも確かにそばにある“好き”として。
星を見にいく日が来たら、たまにこのイーブイも一緒に連れていこうと思う。
その時、袋のままかもしれないし、毛並みに触れているのかもしれない。
どんな形でも、星空の下でそっと抱えていたい。
あの人と共有した星の記憶を、
未来へつなぐ小さな灯りとして。
新しい部屋、新しい生活、新しい景色。
そのどこに置いても、
このイーブイはきっと変わらずそこにいて、
静かに、やさしく、胸の奥の光を守ってくれる。
過去の温度を胸の表面でそっと感じながら、
また一歩、前へ進んでいく。
この子と一緒に。


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