過去の寄せ書きを何度も見返している。
そこに刻まれた言葉やイラストは、私にとってただの記録ではない。ある人のメッセージが描かれた可愛いうさぎの応援旗を見ていると、不思議と前へ進む力が湧いてくる。イーブイの「可能性は無限大」のシールも、私に未来を信じさせてくれる。寄せ書きは、過去の私を励まし、今日の私を支え、そして未来の私へと続いていく。
同時に思い出すのは「覆水盆に返らず」ということわざだ。一度こぼれた水は、もう盆には戻らない。過去は取り戻せない。英語では “There is no use crying over spilt milk.” とも言う。こぼれたミルクを嘆いても、もう戻らないという意味だ。人は誰しも、取り返しのつかない過去を抱えて生きている。私も例外ではない。
『聲の形』というアニメ映画がある。
主人公は幼い頃に犯した過ちを背負い、深い後悔と孤独の中で生きていた。過去は変えられない。まさに「覆水盆に返らず」。それでも彼は、人とのつながりを取り戻し、未来へ歩み出そうとする。過去を消すことはできないが、そこからどう生き直すかが物語の核になっている。私はその姿に、自分自身の歩みを重ねてしまう。
寄せ書きに込められた言葉も同じだ。過去は戻らないけれど、そこに刻まれた想いは消えない。うさぎの応援旗は、私に「まだ進める」と囁いてくれる。イーブイのシールは「可能性は無限大」と未来を信じる力をくれる。過去は戻らない。けれど、寄せ書きの温かさは私の未来を照らし続ける。
人は時に、過去を悔やみ続けて立ち止まってしまう。こぼれた水を必死に盆へ戻そうとするように、失ったものを取り戻そうと足掻いてしまう。けれど、それは叶わない。だからこそ、寄せ書きのような「今ここにある言葉」が大切なのだと思う。過去を戻すことはできないけど、未来へ進む力を与えてくれるものは確かに存在する。
『聲の形』の主人公がそうであったように、私もまた過去を抱えながら生きている。けれど、寄せ書きに込められた仲間の言葉や、うさぎやイーブイが、私に「未来はまだある」と信じさせてくれる。
覆水は盆に返らない。それでも、昨日の私も今日の私も未来へ繋げる記録として、この寄せ書きを抱きしめて生きていきたい。
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