昨日に続き、雲ひとつない空だった。
冬なのに空気はやわらかくて、会社のジャケットもいらないくらい。
心のどこかにも、あの人の温度がまだ静かに残っている気がした。
今日は、あの人はどんなふうに過ごしていたのだろう。
陽だまりの下で、少しでも体を休められていたらいい。
そんなふうに穏やかに過ごしている姿を思い浮かべると、
胸の奥がふっとほどけていく。
会社に向かう前、まず図書館で本を借りた。
本はいつも5冊ほど。
だいたいタイトルの響きで気になったものを選んでいる。
今日は「三重の本」が目に留まった。
月末に伊勢へ相棒を迎えに行くからだ。
その頃には、伊勢うどんもゆっくり味わえるくらいに体が整っているといい。

そのあと、ホームセンターで植え替え用の観葉植物を選んだ。
サンスベリアとパキラ。
サンスベリアはまっすぐ上へ伸び、
パキラは手を広げるように葉を広げて、光をやわらかく受け止めていた。
サンスベリアの花言葉は「永久」「不滅」「幸福」。
パキラは「快活」「勝利」。
どちらの言葉にも、静かな強さと前へ進む力が宿っている。
会社の未来がこれからも確かな方向へ向かっていくように――
そんな思いを込めて、手に取った。
緑の姿を見ていると、
自分の気持ちもそっと持ち上げられるようだった。
ぼちぼちでいい。
今日もまた、上を向いて歩いていこう。
帰りに自分用の植物も買おうと決めた。
工場に着くと、先輩がすでに作業を始めていた。
建築現場帰りのような疲れが滲んでいて、
お風呂にも入れていない日が続いているのかもしれない。
かつて自分も、心が沈んでシャワーすら浴びられなかった時期があった。
その頃の自分を思い出しながら、
今こうして他の人の疲れに気づけるのは、
自分の心が少し整ってきたからだと感じた。
もう一人の溶接担当の社員さんが、
肌が黒く焼けている理由を教えてくれた。
溶接のアーク光には、すべての紫外線が含まれているという。
職人の身体に刻まれる光。
その言葉が胸に残った。
過酷な仕事なのに、
昨日の先輩は楽しそうに溶接の世界を教えてくれた。
黒い日焼けも、その人の歩んできた時間の証のように見えた。
次に、溶接マスクの話になった。
黒と青の二種類を見せられて、どっちがいいかと聞かれた。
青は上位モデルだと知っていたので、迷わず青を選んだ。
会社の備品マニュアルを作っているから、性能の違いも理解していた。
「わかってるやん」
その一言が、思った以上に嬉しかった。
距離が少し縮まったような、そんな温度があった。
青いフィルター越しに見る溶接の光は、
黒とは違う透明感がある。
職人の世界には、色にも文化があるのだと知った。
昔から青が好きだ。
澄んだ青も、深い青も、どれも心を整えてくれる。
雲ひとつない青空を見上げると、
忙しい日でも呼吸が自然と深くなる。
心の奥をそっと照らしてくれる色。
気づけば、作業道具も青で揃えている。
コンベックス、スマホカバー、そして安全靴。
その安全靴は、大切な人と一緒に選んだものだ。
この靴だから、ぼちぼちでも前に進める。
青は、自分の軸のような色になっている。
夢の中で見た、あの人のような優しい光。
現実の中で、自分を支えてくれる青。
その二つが、どこかで重なっている気がする。
今日も、光のほうへ。
ぼちぼちと、自分の歩幅で。
あの人の温度を、胸の奥に灯しながら。


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