大切なあの人から光をもらえた。
胸の奥で小さく弾むその跳躍は、朝露が弾ける瞬間のように透明で、柔らかく、元気な色をしていた。
朝の冷え込みで手が冷たくなったトイレ掃除のあと、心まで少し冷えていたのに、その光がふわりと温めてくれた。
「ぼちぼちでいい」そう思える安心が、光とともに心に灯っていた。
朝から空は明るく、日中には外の気温計が 20℃ を指していた。
風は少し土と砂を含み、首筋にはじんわりと汗が滲む。
病み上がりで身体は重いのに、心は光を受け取った分だけ軽くなっていた。
午前は芸術家の案件対応。依頼は額縁だったが、数ミリの厚みや縁のエッジ、色の濃淡にまでこだわりがある。
「ここに世界が映る」と語るその姿に、世界のアーティストの凄みを感じた。
ゴールド色は、太陽の余韻を閉じ込めたような輝き。複雑な調色になりそうなので、早めに塗装会社へ相談することにした。
芸術と技術の交差点を越えていくことが、今の自分の挑戦だと思った。
午後は営業で外回り。車内でも汗ばむ陽気だった。
途中で立ち寄ったホームセンターでは、あのマンチカンがまだいてくれた。背中を向けて眠っていたが、小さな寝息で背中が波打つ姿が可愛らしく、安心の象徴のように思えた。
コンビニでは若者がアイスを買っていた。甘いアイスを食べられる自由が羨ましかった。僕は胃のこともあり食べられないけれど、見ているだけで涼しさを分けてもらえたような気がした。
営業から戻ったあと、先輩に声をかけた。今はイオン系列のファッションビルの建築を担当されていて、一件でうん千万の大型案件だ。
施工図の読み解きを頼まれ、久々に微分積分に挑戦した。数字の列は冷たい壁のように立ちはだかり、忘れていた公式を呼び戻すのは錆びた鍵を回すような感覚だった。
建築の世界では、断面二次モーメントや応力分布、たわみ計算、連続梁の解析などで積分が普通に登場する。図面には書かれないが、裏側の計算として確かに存在している。
時間はかかったが、なんとか計算を終えることができた。
日々新しいことだらけで、呼吸は浅くなる。
それでも、あの人の光を思い出すと不思議と頑張れる。まだいけるって、心に火が灯る。
行き先は余白でいい。前に進んでいるから、大丈夫。
無理はしない。休憩したくなったら、道の駅でひと息つけばいい。
木陰のベンチや冷たい水を思い浮かべる。
そして、野菜の直売所で買った新鮮なにんじんを、あの人が少しずつかじる姿を想像した。丁寧に食べるその仕草もまた、安心の象徴のようで、心がふわりとほどけていった。
帰ったら、アスパラガスに水をあげよう。
細い茎が空へ向かって真っ直ぐに伸びる姿に、確かな温もりを感じる。
水を吸い込む音は聞こえないけれど、命が静かに動いている。
その姿は、自分自身の呼吸の回復と重なって見える。
小さな整えが未来へ繋がる。今日も「大丈夫だよ」と伝えたい気持ちを、そっと置いておきたい。


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