月のレフ板

趣味

今日の朝もひどく冷え込んでいた。今日からしばらくのあいだ、ひとまず一週間の休みに入る。悔しくて悔しくて涙が溢れる。
それでも空は驚くほど澄みわたり、深い青がどこまでも続いていた。
冬の朝だけが持つ、まっすぐで静かな光が部屋の中へそっと差し込んでくる。

あの人から光をもらえた。
冷たい空気の中でも庭を駆け回れそうな、走り出せそうな光。
脚に力が入るのがわかった。
このエネルギーを今日の自分の成長に変えたい。 そんな前向きな気持ちが自然と湧き上がってくる。

あの人は、どんな朝を迎えていただろう。
寒さで震えていなかっただろうか。
手は冷えていなかっただろうか。
今日もあの人が、穏やかに過ごせていますように。

自分もどこかで温められているのだろうか。
光を受け取った喜びが胸に広がって、静かに涙が滲んだ。

涙が出る前の、鼻の奥がツンとする感覚に、ふとお寿司屋さんで笑い合った日のことを思い出す。
ワサビを多めにつけることを「ツン死する」とふたりで冗談を言い合った。
あの頃から、お寿司をしばらく食べていない。
あの人と食べるお寿司は、どんな味だっただろう。

光の重さ、温度、速度。
その全部が、あの人とどこかで繋がっているように感じられた朝だった。

睡眠薬を飲んでも三時間しか眠れなかった。
それでも夢を見た。

夢の中で、あの人は高校生役として恋愛ドキュメンタリーに出演していた。
清楚な雰囲気の中に、あの人らしい明るさがふわっと滲んでいて、
画面の中でもひときわ輝いていた。

シーンは校舎裏。
僕は照明係としてレフ板を構え、あの人に光を当てていた。
向ける光はやけに眩しくて、目を細めながらも、その姿を見守っていた。

監督の「カット」が響いた。
柔らかな風が吹き抜け、金木犀の香りがふわりと漂う。
季節は秋なのだろう。
夢なのに、香りだけが妙にリアルだった。

遠くから、あの人の様子を静かに見つめている自分がいた。
フィクションだとわかっているのに、
ただ穏やかに、あの人がこちらへ歩いてくるのを待っていた。
マネージャーが水を渡しに行く姿を、そっと目で追っていた。

照明係という立場は、どこか象徴的だ。
光を当てることはできても、物語の中心には立たない。
その距離感が、どこか優しくもあり、少し切なくもあった。

昨夜、曇り空の下で夜空に向けてカメラを回した。
スノームーンの夜だったから、たとえ今は雲に覆われていても、深夜には晴れ間がのぞくかもしれないと思ったのだ。
寒さは容赦なく、外に置いたカメラのバッテリーはすぐに力を失っていった。
結局、撮影できたのはおよそ二時間ほどだった。

次は、充電しながら撮ってみよう。
そんな小さな気づきも、自分なりの前進だと思える。

月も少しずつ前へ進んでいる。
雲に隠れるときもあるけれど、それでもゆっくり、確かに。
まるであの人に見守られながら歩いているような、そんな速度で。

昨日描いた「月に寄り添ううさぎ」の絵を思い出す。
あの人は、その絵を見てくれた。
光を返してくれた。うさぎの仕草のように、耳へそっと手を添える。
さっきまで空調の音だけが響いていた部屋なのに、
あの人の声がふっとよみがえった気がした。

あの人の温もりが恋しくなるけれど、
またあの人の前に立つとき、胸を張れるように。
今日を丁寧に積み重ねていく。

未来はまだ空白のままでいい。
空白だからこそ、どんな色にも染められる。
焦らず、止まらず、ぼちぼちと進んでいく。

午後はカーショップへ、相棒(車)のための道具を買いに行くつもりだ。
この寒さの中で震えている相棒に、少しでもあたたかく過ごせるよう、防寒具を用意してあげたい。

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