冬空のイースター

仕事

昨日は選挙速報を眺めていたら、気づけば夜更かししていた。
就寝は午前2時。睡眠は5時間ほど。
その短い眠りの中で、夢を見た。

駅前の大きな交差点。
壇上に立ち、働けない悔しさを、胸をつかむほどの痛みと一緒に叫んでいた。
誰に向けてでもない叫び。
それでも、3、40人ほどの人たちがじっとこちらを見つめ、
耳を傾けてくれていた。
その視線に、なぜか安心を感じていた。

目が覚めた瞬間、前職の懐かしい空気がよぎった。
早く出勤して、壁に飾られた神棚に手を合わせていたあの時間。
静かで、落ち着いていて、
一日の始まりを整えてくれる儀式のようだった。
思い出した途端、少しだけ目に涙が浮かんだ。

カーテンを開けると、向かいの家の屋根にうっすらと雪が積もっていた。
今日の雪は透明な白に感じた。
太陽もまだ寝起きのようで、ゆらゆらとした光が部屋に入ってくる。
冷たい空気が肌に触れた瞬間、
夢から現実へとゆっくり戻っていくような感覚があった。
その静けさが、「今日を始めよう」と背中を押してくれた。

歩道は積もってはいなさそうで、走れそうだとほっとした。
安全のために、公園の外周を走ることにした。
時計を左手に巻き、「大丈夫」とひとことつぶやく。
新しい靴を履くと、自然と背筋が伸びた。

走り始めは少し緊張していた。
手術してから久しぶりのランニングで、
無意識に胃のあたりをそっと押さえていた。
最初はゆっくり、足と地面をなじませるように進む。
地面が濡れていて、草の匂いがやさしく鼻に届いた。
雪が残る道は、石畳が少し濃く赤らんで見えて、
まるで地面も霜焼けしているみたいだった。

坂井さんの曲を自分なりにまとめたセットリストを聴きながら走る。
「My Baby Grand ~ぬくもりが欲しくて~」が流れたとき、
息を大きく吸い込んだ。

“声が聴きたくても、笑っていても、逢えないもどかしさ”
“宇宙の底に二人生きてる”

そんなフレーズが、
冷たい空気の中でも温度を失わずに届いてきて、
胸の奥の静かな部分にそっと触れていく。

音楽を聴くとペースを上げたくなる瞬間がある。
だけど、今日は上げない。
焦らず、止まらず、ぼちぼち。
それが今の自分を整えるリズムだと思った。
心拍数が落ち着いていくのを時計で確認しながら、
ゆっくりと体を温めていく。

走っていると、ふとあの人の笑顔やしぐさが浮かぶ瞬間がある。
この雪道をどんな歩幅で歩くのだろう、
この風をどんなふうに感じるのだろう。
そんな想像が静かに流れていく。
坂井さんの声に耳を預けていると、あっという間に時間が過ぎて、
いい具合に汗をかいたところで走り終えた。

朝ごはんは、うさぎのクッキーとゆで卵。
かわいいうさぎさんの形で、バターの香りがふわっと広がる。
黒目の大きなこの子は、サングラスにしてあげたらよかったなと思った。
ゆで卵は出来立てで、ふわふわと温かい。
うさぎとタマゴ。
どこかイースターのようで、
あの人と行った神戸港やUSJの景色を思い出した。
そんな思い出に身を寄せながら、ゆっくり味わった。

昼前におでんを仕込む予定で、これから食材を買いに行く。
大根を切るときの、あのすっと包丁が入る感触が好きだ。
はんぺんは安心して胃に受け入れられるやわらかさ。
トマトを入れるのは、ただの好奇心。
出汁の中でどんな表情になるのか、試してみたくなった。
そんな小さな仕込み。
そんな一日のはじまり。

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