私生活の「ぽけてなし」

今日はクレーンの学科と実技講習。
午前中、ある講師の話を聞き、自分自身の姿勢について深く考えさせられた。

その講師は、かつてトヨタと取引のある部品メーカーの製造現場で責任者を務めていた方だ。語られたのは、ある工場査察のエピソードだった。

トヨタの社長が自ら査察に来るということで、現場は入念に準備を進めた。隅々まで掃除し、立派な改善ポスターを貼り出し、万全の体制を整えた。しかし、視察を終えた社長は、講評の場で一言も発さずにそのまま帰ってしまったという。

理由は、意外なほどシンプルだった。

「指差し呼称を、誰もしていなかったから」

「どれほど見映えよく整理されていても、基本の『指差し呼称』すら徹底できていない現場は、プロとして信用できない」

社長が見ていたのは、飾られたポスターではなく、一歩間違えれば命に関わる「基本」を全員が守り抜いているかという、誠実さの積み重ねだった。

この話を聞きながら、あの人のことを思い浮かべていた。
ふりかえって、自分の私生活はどうだろうか。

仕事で格好をつけたり、表面上の言葉を並べたりすることは、工場の壁に貼られたポスターに似ている。だが、本当に大切なのは、誰にも見られていない私生活という現場で、自分を律せているかではないか。

トヨタには、安全の鉄則として 「ぽけてなし」 という言葉がある。

  • ポ:ポケットに手を入れて歩かない
  • ケ:携帯電話を歩きながら使用しない
  • テ:階段の昇り降りは手すりを持つ
  • ナ:斜め横断をしない
  • シ:指差呼称の徹底

一見、当たり前すぎるほどの内容だ。
しかし、こうした「自分との約束」を疎かにする甘えは、知らず知らずのうちに表情や行動に滲み出て、いつか大切な場面で信頼を損なう原因になる。そんな甘えがあるままでは、あの人から心からの信頼を得ることなどできない。

講師の方は「徹底するのに1年ください」と言った。その申し出に対し、トヨタ側は「半年で。抜き打ちで見に行く。本社とは限らない。支店、海外に行くかもしれない」と告げたそうだ。講師の方はそれから、文字通り世界中の現場を走り回り、査察をクリアして取引の継続を勝ち取ったという。

僕も、自分を甘やかすのは改めてダメだと感じた。
日々の姿勢、考え方、そして環境づくり。
信頼とは、そうした泥臭い積み重ねの先にしか宿らないものなのだ。

今日、この午前中に改めて決めた。
やると決めたら、やり切る。
いつ、どこで、あの人に見られたとしても恥ずかしくない自分でいるために。

まずは自分の足元、日々の私生活の「ぽけてなし」から徹底していこうと思う。
そんな午前中の記録。

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