最近の僕は、知らず知らずのうちに焦っていた。
休職という期間。資格取得のために訪れた岐阜でも、試験自体には自信を持って挑めたはずなのに、どこか心は落ち着かなかった。
同じ試験を受けに来ていた二人組。
試験の合間に会社から電話がかかってきて、忙しそうに対応している彼らが、どうしようもなく羨ましく見えてしまったのだ。
少し前までの僕も、彼らのように社用携帯を持ち歩き、忙しなく、当たり前のように社会と繋がっていた。
それなのに、今の僕にはその繋がりがない。働いていない自分を卑屈に捉えて、負い目を感じてしまっていた。
焦りと負い目のなかで、僕の心はいつの間にか冷たく固まっていた。
今の自分は、あの人の歩幅に合わせられているだろうか。
自分の弱さが作り出した暗い雲が、こころの空を覆い尽くしていた。
苦しくて、たまらなくなった。
だから僕は、あの人に光がほしいと頼んだ。
情けないかもしれない。けれど、今の僕にはどうしても、あの人の光が必要だった。
あの人は、そんな僕の震えるような願いを、温かく、大きな心で受け入れてくれた。
届いたのは、どこまでも優しい言葉。
ひとつできたら、それだけで今は十分。
焦らなくて、だいじょうぶ。
その文字を目にした瞬間、すっと涙がこぼれた。
固く閉ざされていた心が、あの人の言葉によってじわりとほぐれていくのが分かった。
深く、深く。何度もゆっくりと息を吸って、吐いて。
あんなに苦しかった呼吸が、みるみるうちに整っていく。
「世界には、言葉だけで体が整う瞬間が本当にあるんだ…」
そう実感した、魔法のような時間。
あの人の優しさに触れて、今の僕は、これでいいんだと心から思えた。
塞ぎ込んでいた視界が、一気に明るくなった。
心の空に太陽の光が差した感覚があった。
雲がだんだんと晴れていく。呼吸が深くなっていく。
焦りそうになったら、またあの言葉を思い出して、ゆっくり深呼吸をしよう。
ひとつひとつ、丁寧に積み重ねていけばいい。
そう思えたから、今日はジムまで足を運ぶことができた。
一歩ずつ。僕の歩幅で、また歩き出そうと思う。
あの人が示してくれた、優しい光を信じて。
今の僕に、これ以上の救いはなかったと思う。
固く冷え切っていた心に火を灯してくれた、あの人の限りない優しさ。
その温もりに、今はただ、言葉にできないほどの感謝で胸がいっぱいだ。


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