僕が僕のために作った雲

勉強

朝、ゴミ出しのついでにポストを覗くと、全国健康保険協会から一通の封書が届いていた。中身は、以前提出した傷病手当金申請の返戻だった。

書類の「業務上の傷病」欄にチェックを入れていたことが、差し戻しの理由らしい。業務上だと言うのなら、まずは労働基準監督署に相談し、労災申請を行うようにとの指示が添えられていた。

正直なところ、自分の今の状態が業務上にあたるのか、そうではないのか、自分でも判然としない部分がある。けれど、これ以上会社に波風を立てたくはないし、何より迷惑をかけたくないという思いが勝った。僕は「業務外」にチェックを入れ直し、そのままポストへ返送した。

たったそれだけの手続きなのに、ひどく疲れてしまった。午前中は、ただぼんやりと過ごしていた。身体が重く、畳の上に横たわって、窓の外を眺める。

青空に、ちぎれた白い雲がいくつも散らばって流れていた。その、とりとめのない雲の形を見つめているうちに、それがふと、餃子に見えた。

餃子を作ろう。
何かに導かれるように、僕は材料を買いに外へ出た。

あの人からの光を、深呼吸するように胸に取り込み、ゆっくりと呼吸を整える。いつかあの人に作ってあげたい。そんな未来を想像しながら、一人分の材料を選んだ。

今日の餡は、春キャベツ。瑞々しくて、この季節にしか味わえない柔らかな緑が美味しそうだったから。

台所に立ち、久しぶりに皮を広げる。ひとつめ。指先に力を込めすぎて、餡が端から飛び出してしまった。少しずつ、包む感覚を思い出していく。二個、三個。黙々と手を動かしていると、不思議と心が凪いでいくのがわかった。

休んでいる会社のこと、遠くにいるあの人のこと。小さな独り言を呟きながら、餡を皮の中に閉じ込めていく。とりあえず、15個。今日の晩御飯と、明日の朝ごはんの分。残りの皮と餡は、次に焼く日を楽しみに、丁寧に冷凍庫へしまった。

今日は、餃子を作るためだけに外に出た。働かずに、平日の昼間から餃子を焼いている30代後半の男。こうやって文字に書くと、やっぱり情けなさがこみ上げてくる。

あの人は今、仕事を無理していないだろうか。
僕はこれから社会に何ができるのだろうか。
何を目標にして、生きていけばいいのか。

朝からずっと、出口のない問いが頭の中を回っている。

また、資格を取ろうと思った。何かにすがっていないと、自分がどこかへ消えてしまいそうだったから。

考えているのは、建設業経理士。簿記2級の基礎があるなら、理解も早いらしい。会社に保持者がいれば、公共事業の工事入札時にも有利になるとあった。今の僕にできる、精一杯の恩返し。まずはここから始めるのが、一番現実的なのかもしれない。

だけど「気休め」で終わりたくない。恩返しの先に目指すのは、経営の舵取りを担う役員の座だ。

その高みへ至るため、中小企業診断士という険しい山にも挑みたいと思った。経営や財務の知識は、将来の自分にとって最強の武器になるだろうから。

ただ、合格に必要な1,000時間は重い。8月の一次試験まで半年を切った今、無理な詰め込みで自分を壊しては元も子もない。

今は無謀な突撃ではなく、着実な一歩が必要だ。だけど目標は諦めない。来年という確かな未来へ見据え、今はその土台を作る時間を大切にしよう。

宅建についても調べてみた。うちの会社も一応不動産を持っている。不動産の知識は、将来の盤石な経営において、自分の身を守る強力な防具になるかもしれない。

けれど、これも試験は一年に一度きり。今は欲張るべきではないのかもしれない。

自分の「やりたい」に正直になって高い壁に挑むべきか。
それとも、確実に手に届く建設業経理士から始めるべきか。

答えは、まだ見つからない。

だけど、何か目標がないと、僕はただぼーっと日々をやり過ごしてしまう。自分を責めるのは、もう終わりにしたい。

ひとつできたら満点。今日は、空の雲から餃子を連想して、それを形にできた。それだけで満点だと、自分に言い聞かせたい。

焼き上がった餃子の湯気越しに、また明日を考える。一歩一歩、ぼちぼちでいい。

今日の夕飯は、僕が僕のために作った、雲の形の餃子だ。

내가 만든 손만두
(僕が作った手作り餃子)

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