殻の中の希望

趣味

2026年4月1日。今日から新しい年度が始まる。世の中が新しい風に包まれるこの日の朝、僕はいつものようにキッチンに立ち、卵焼きを作っていた。卵焼きを作ることは、もはや僕のささやかな日課となっている。

カラン、とボウルの縁で殻を割ったとき、驚きが走った。現れたのは、二つの黄身。「ふたごの卵」だった。

この4月1日という節目の朝に、双子の卵に出会えたことに、一体どんな意味があるのだろうか。単なる確率の問題だと言ってしまえばそれまでだが、今の僕にはそれが、何か素晴らしい幸運の前兆のように思えてならなかった。それだけで、少し沈んでいた気分がふわりと浮上するのが分かった。

外に目を向けると、あいにくの雨模様だ。新年度の初日が雨というのは、少し皮肉な気もする。街には、今日から新生活を始める新入社員たちの姿があるだろう。おろしたての新しいスーツが雨に濡れ、せっかくの門出に気分を落としている人もいるかもしれない。

しかし、僕は彼らに伝えたい。「大丈夫だ」と。
君たちは今、働ける場所に立っている。今日という日を迎えるために、どれほどの準備をし、努力を重ねてきたことか。その姿勢だけで、十分に立派で、眩しい。

翻って、僕はといえば、まだ「準備中」の身だ。適応障害による休職期間を経て、ようやく次の一歩を踏み出そうとしている。明後日、会社の役員と話をすることになった。そのとき、自分の今の状態を記した診断書も渡すつもりだ。一歩進む怖さはあるが、避けては通れない道だと思っている。

そんな僕の心を支えているのは、「大切なあの人」から届く光だ。
新年度の初日、誰もが忙殺されているであろうこの日にも、あの人は返信をくれた。かつては遠く感じていた距離も、今ではこうしてスタンプを送り合えるまでになった。少しずつ、本当に少しずつではあるが、僕たちの関係も、そして僕自身の人生も、前に進めているのだと実感する。

ふと、以前の職場のことに思いを馳せる。
新しい年度を迎え、あそこは今頃どうなっているのだろうか。新入社員は入ったのだろうか。誰が昇格し、誰が異動し、あるいは誰が去っていったのか。朝作った卵焼きの残りを口に運びながら、人の流れというものの無常さを考えていた。

昼食を済ませた後、雨の中を図書館へ向かった。
静寂に包まれた館内には、雨の日でも変わらず、多くの年配の方々が新聞や本を読みに訪れていた。時折、外を走る車が雨を弾く「シャーッ」という音が微かに聞こえる。いつものルートで書棚を回り、新しく興味を惹かれた本を数冊借りて家路についた。

帰宅後は、NetflixでBTSのドキュメンタリーを観た。
兵役という大きな壁を乗り越え、戻ってきた彼らの姿は、以前よりもずっと大人びて、研ぎ澄まされているように見えた。

ここで少し、韓国の兵役という「義務」について触れておきたい。
韓国では、満18歳以上の男性に兵役の義務が課されている。原則として28歳までに入隊しなければならず、これはたとえトップスターであっても例外ではない。社会全体が「公平さ」を極めて重んじる国だからこそ、この制度は非常に重い意味を持っている。

2020年には、いわゆる「BTS法」と呼ばれる兵役法の改正が成立した。これは、大衆文化の分野で国威発揚に著しく貢献した人物に限り、入隊を30歳まで「延期」できるという特例だ。ポイントは、これが「免除」ではなく、あくまで「延期」であるという点にある。BTSが受章した文化勲章が、この法改正の大きな背景となった。

しかし、メンバーたちはその特例に甘んじることなく、自らの意志で順次入隊することを選んだ。「国民としての義務を果たす」という彼らの選択は、韓国国内でも高く評価された。その生き様は、同じ男性として、そして一人の人間として、本当に格好いいと思う。

「義務を果たす」ということ。
今の僕にとって果たすべき義務とは何だろうか。それはきっと、再び社会に出て、健やかに働けるようになることだ。待ってくれているあの人に、胸を張って向き合える自分になることだ。

そのために、今日も僕は心と体を鍛える。
新しい年度が始まっても、焦る必要はない。僕は僕のペースで、僕の義務を果たすための準備を続けていく。

今朝出会ったふたごの卵が、僕に教えてくれたような気がする。
たとえ今は雨が降っていても、殻を割ればそこには新しい希望が二つ、並んでいるのだと。

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