工場のノイズと、眩しい太陽

仕事

大腸がんを患っている上司が、今日で出勤最終日を迎えた。

最後の日ということもあり、NC旋盤のレクチャーをみっちりと受けることになった。

早く技術を身につけ、理解しなければいけない。頭ではそう分かっているつもりなのに、休職明けの頭はまだ思うように働いてくれない。

そんな焦りに拍車をかけるように、親からは無言の、あるいは直接的なプレッシャーをかけられる日々が続いている。

いつもの朝7時。

少しでも早く感覚を取り戻そうと、ひとりプログラムを組んでいた。

しかし、朝一番からプログラムの組み方や、加工の方法について細かく口出しをされてしまった。さらに追加の注文まで重なる。

頭がボーっとしてしまい、目の前の指示がなかなか脳内に落ちてこない。

「どうして、こんなに自分を追い詰めるんだろう」

「どうして、ここまで追い詰められないといけないんだろう」

そんな暗い思考がぐるぐると頭を巡る。

そりゃあ、成長はしたい。会社にまっとうに貢献したいし、将来的には役員の座に就いて会社を引っ張っていきたいという目標だってある。

だけど、今はほんの少しだけでいいから、平穏に、穏やかに過ごしたいと思うのは贅沢なことなのだろうか。

「やっぱり、復職するのは早すぎたのかもしれない」

そんな後悔の念が、じわじわと胸に広がっていった。

誰とも本音で話せず、孤独感に苛まれる。まるで休職前の、あのどん底だった状態に逆戻りしてしまったかのような錯覚を覚えた。

ただ、当時と今では決定的に違うところがある。

営業をしていたあの頃は、主な舞台は外回りだった。車の中にひとりきりでいる時間が長く、誰の目にも見えない、正体の分からないストレスにじわじわと潰されていた。

「自分は誰からも嫌われているんじゃないか」

「自分を必要としている人なんて、この世に誰もいないんじゃないか」

そんな被害妄想ばかりが膨らんで、心を蝕んでいった。

今は違う。工場という、人がいて、モノが動く場所にいる。だからこそ、今度は「目に見えるストレス」に潰されそうになっているのだ。環境が変われば、苦しみの形も変わる。

だけど、苦しいばかりの一日ではなかった。

午後、ふと工場の外に出て空を見上げた。

差し込んできた日差しが、やけに眩しかった。

その暖かさに触れたとき、なんだか空が「ぼちぼちでいいんだよ」「大丈夫、へっちゃらさ」と語りかけてくれているような、そんな気がした。

今日は残業をするだけの元気は残っていなかったけれど、それでいい。

明日の午後からの勤務に備えて、今夜は心と体をしっかり休めようと思う。

明日の朝は、メンタルクリニックの受診日だ。先生に今の気持ちをそのまま話して、また一歩ずつ、僕のペースを整えていこう。

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